低徊趣味ぶろぐ

漫画家・嘉村朗のブログ

誰もそんなことは教えてくれませんでした

全文書取りも上巻が半分までいきました。
ただ写すだけにもかかわらず、なかなか時間のかかるものです。。。

そこでいいなあと思った部分を抜粋。

「僕は自分が永久に影を失うことになるなんて思わなかったんです」と僕は言った。「ほんの一時的な措置だと思ったんです。誰もそんなことは教えてくれませんでしたしね」 (「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」上巻 新潮文庫 P.143 L.11〜)

まさにそのとおり、この世で生きているあいだ、
自分の身に降りかかるあらゆることについて、
誰もなにも教えてくれないのです。

それが普通でなんですよねー。
自分にとって都合の悪いことが降りかかった場合、それを「理不尽」と人はよびますが。

どんな些細なことでも、簡単なことでも、
教えることなんてきっとできない。
教えてくれる人もいるにはいますが、
教えてもらった方はそんなこと聞いちゃいないのです。大抵の場合。


「まさかこんなことになるなんて…」「誰もそんなことは教えてくれませんでした」というこのかんじ、
これを「自由」というのではないでしょうか。

わたしの前に広がる千万の選択肢。
楽な道から死にも通ずる厳しい道までえらび放題。
どれも足を踏みだしてみるまで何が起きるかわかりません。
当然、理不尽極まりない出来事にも遭遇するでしょう。

ただし、理不尽な出来事は自由の代償ではありません。
自由は代償など求めません。…たぶん。

誰も教えてくれない世界に生きているから、
誰も知らない方法でものごとを考えたり動かしたりできるはず。
理不尽なことに出会っても、
嘆いたり怒ったりせずに生きれるはずだ。

風とおなじ速度で、走るように・・・