この記事は本の感想であるがオススメするための文章ではない。
どうしても書いておきたい気持ちが書かせた文であり、本書を読んだ人で他の読者がどう読んだのか気になる人のために置いておくものである。
この一年、ずっとモヤモヤしていたことがこの本を読んでちょっぴり軽くなった。
モヤモヤしていたことというのは、「自分の伝えたいことが思うように伝わらないこと」だったり、コミュニケーションがうまく取れないことだったり、「生きるのがしんどすぎる」ことだったりする。
タイトルと装丁からはビジネス書、ハック本のようなものをイメージするが本書から受けとったメッセージはそんな生易しいものでも軽いものでもなくて……
率直にいうとドアの先は真っ暗闇の世界でそこに踏み込んでしまう第一歩というかんじだった。
そんでもって、そのまま闇の中を歩いていく強さをもったものだけが会話している世界を見たかんじだった。
そして、わたしはそういう世界の住人になろうとしている気がした。そっちにいかなければならないような気がした。自分がやり遂げなければならないことに必要だと思うのだ。
とにかくわたしには本書が響いた。
昔、「分裂勘違いくん劇場」を読んでいたときにはわからなかったことが今のわたしにはわかるようになっていたとも言える。
わたしにはどうしても割り切ることができなかったものに、本書ははっきりと答えを出してくれた。(これも錯覚の力なんだけど笑)
何かを主張するときは、「一貫して偏ったストーリー」を語る。(P.275)
この「一貫して偏ったストーリーを語る」というのは漫画の作り方でもセオリーなのだが……、本書を読んだいま、わたしにとってただのテクニックではなくなってしまった。
わたしのどうしても割り切ることができなかったことというのは、本音と建前が同時に存在することが当然であるという事実を、事実のままわかってもらわなければという葛藤だった。でも、そんなことをしているからコミュニケーションがうまく取れなかったのだろう。「一貫して偏ったストーリーを語る」、これは自分にとって嘘の行動なのだが、本当のことを伝えようとするとそもそも聞いてもらえない。それを受け入れなければならない。抗う自由はもちろんあるが、それは賢い行動ではないだろう。つらい。
帯にある「錯覚資産を使いこなせ!」というハック的なメッセージは表面上のもので、それよりずっと深刻なメッセージが与えられているように思った。
最後の数ページは実にスリリングでショックだったが、同時に親切でありがたくもあった。
だから、あなたは孤独になるだろう。(P.360)
孤独に感じるのが当然なんだよ、そんな先人のメッセージがわたしのモヤモヤを少し軽くしてくれた。