シチューやカレーを作るとき、まず、野菜と肉だけを煮る。
塩や胡椒も入れず、火が通るまで煮る。
野菜や肉の匂いが湯気に混ざって立ち上る。
これがいわゆる「やさしい味」のようなものだと思う。
やさしい味とは素材からでる甘さのことだと思う。
母は味付け前のスープを前にして言う。
「赤ちゃんのときはコレを与えてたんだよ。ものの味がわかるように」
毎度「ふーん」と返事をするだけだが、
真面目に料理をしてくれる人でよかったなと思っている。
中高生の頃はわからなかったが、
大学に上がって以降、外食の機会が増えた。
外食が続くと胃も気分も疲れてしまう自分を知った。
美味しいのになんだか疲れるのだ。不思議だ。
休日の昼、たまに母がスープだけを作る。
ごはんもパンもない。スープだけの食卓だ。
食いしん坊のわたしには正直ちょっと物足りないが、
案外、人間はその程度の量で事足りるはずだとも思う。
そう言い聞かせながらわたしは食べている。
気怠い午後の、薄暗い居間でスープを無言で食べたりする。
入れる野菜によって味が違うのがうれしい。
母とは猫の話くらいしかしないが、
味の濃過ぎない料理を作ってくれるのは本当にありがたいなーと思っている。
いかん、まとまらないし、まとめる気も起きない。
以上書いたことはバラバラだけど、
わたしの中では共通のイメージで繋がっている。
それをうまく面白くパッケージ化させて人前に出すのが
「書く仕事」なんだな。きっと。